この1文でどこまで引っ張れるんでしょうか。
さて、いよいよ文の後半を見ていくことにしましょう。
insulasque
Wikiでは「島」となっていますが、
ここでも辞書を引いてみましょう。
insula -ae, f 島
そうなると後ろにくっついている-squeは
語尾変化パターンの一種かもしれません。
では、insulaにどのような語尾変化パターンがあるか
実際に書き出して見てみることにします。
今はまだ、格についてはおいておきます。
アナログですね。
点の縦線は語幹と語尾の区切りです。
語尾に-sが付くパターンはありますが、
-squeは見当たりません。
語尾に-sが付くパターンは、
「複数」と「対格」がクロスしているところにあります。
insulasはinsulaの複数形対格の形なんです。
-que
では、残った-queは何なのか?
これは語尾変化パターンにはないのです。
queを辞書で見てみることにします。
-que …と…、また、そして
この-que、後接語と言われるもので、
単語の語尾にくっついて、並列関係を表す役目があります。
今回の場合は、前文の後に出てきた単語insulasの後ろにくっついて、
前の文に続いて「そして〜」という意味になります。
それにしても
語尾変化パターンの他にさらに語がくっつく場合があるんですね。
ひとまず、queが語尾に付いていたら
このパターンという理解にしておきましょう。
対格というワードが出てきましたが、訳は後でまとめて見ましょう。
permultas
ここで、その後ろのpermultasに注目しましょう。
辞書と仲良く編で、
permultusという語が性や格によって変化すると書きました。
で、いよいよこのpermultasの正体を暴いていきましょう。
まず、この語は「非常に多くの」という意味の形容詞でした。
そして、ラテン語では形容詞が名詞の後ろに来るのが一般的と
前回のAsia Orientaliの時に書きました。
これも同様で、前の名詞のinsulasqueを修飾してるんですね。
insulaは女性名詞でしたので、permultusも性を合わせて
permultaという形になります(第1形態)
そしてinsulasは「複数形」の対格でしたので、
形容詞も複数形になります。
先程は、名詞の性や格に合わせて、と書きましたが、
実は数も合わせてあげる必要があるのです。
(手間取らせやがって…)
後で活用一覧を示しますが、permultaの複数形は
permultaeという形になります(第2形態)
そして、対格になっていたので、
permultaeも対格にしてあげる必要があります。
ここでようやく、形容詞の女性形の変化形一覧を見てみましょう。
複数対格の語尾が-asになっています。
ここでようやく、文中と同じ形、
permultasになりました(最終形態)
prope
propeは大意の時に書いてましたが、
「近くに」という意味の前置詞です。
inと同じですね。
前置詞の後ろは形を変えるというルールがありました。
inの時は奪格という形が来ました。
ということは、propeの後も奪格に…としたいところですが、
実はここにも罠が…(決まりなんですけどね)
辞書でpropeを見てみると
「近くに」という意味のところに<+acc>と書いてあります。
inの時は<+abl>で奪格でした。
accは対格のことを指しています。
つまり、propeの後ろには
語を対格にしないといけないのです。
後ろに国を表す語が3つ続いていますが
いずれも対格になっています。
tenens
最後のtenensもまた曲者です。
辞書を引くと、「封建家臣」って意味の単語が載っていますが、
ここまで島の話をしているのでちょっと関係なさそうです。
そのすぐ下にteneoという動詞が載っていました。
teneo(原形:tenere)の意味は、「しっかり持つ」「捕まえる」といった、
英語でいうところのholdに近い意味です。
多くの島を持っている、ってことかな?
と解釈すればなんとなく意味は通りそうです。
ということで、種明かしをすると
このtenensは動詞tenereの活用の1つなんですね。
tenereの語幹はteneですが、
この後に-nsを付けると、現在分詞形になり
ここでは「持っている」という意味になるのです。
ちなみにGoogle翻訳でラテン語から英語に翻訳してみると
tenantと出てきました。
実はtenantという単語、ラテン語のtenereが由来のようです。
ラテン語由来の語はたくさんあるようです。
それはそのうちまた見ていきたいです。
対格とは?
さて、訳の前に前半で放置していた、
「対格とは何か?」についてまとめます。
対格とは、英語でいうところの
直接目的語に相当する格です。
insulasque permultasと両方とも複数形対格になっていました。
意味は「非常に多くの島」です。
今まで見てきた文脈から、
「(日本は)非常に多くの島々を持っている」
ということを後半では言いたいわけですが、
tenens「持っている」の目的語として、
何を持っているのかを表す時に使われる格が対格なのです。
基本的には「〜を」という助詞を補って訳すとよさそうです。
後半の訳
ようやく後半の文の文構造がわかりました。
後半の文を全部訳すと、
「(日本は)また、中国、韓国、ロシアの近く、太平洋に非常に多くの島を持っている」
といった感じになります。
これでようやく、最初の1文が解釈できたことになりました。
いやぁ、長かったですね。