ラテン語の「日本」のページをスクロールしていたら、下の方にこんな記述があったのです。
モーニング娘。とPerfumeが日本の文化として紹介されていて、さらにラテン語のWikiのページまで用意されてるんですね!
せっかくなので、そっちも読んでみたいと思います。私の学生時代はモーニング娘。ブームでしたが、個人的に好きなのはPerfumeなのでPerfumeのページにジャンプ。
まずグループ名の表記が英語をそのまま採用ではなくて、ローマ字表記なんですね。
Iaponiaを読み進めた時に比べたらありがたいことに文が短いです。
しかしながら、文法に関する新しいこと、新しく説明しないといけない格が2つ登場しています。
まずは前回同様、文を書き起こして、Wiki内で意味がわかる単語は意味を調べて書いておきましょう。
grex
前回、
Iaponia est civitas sui iuris
で、「日本は主権国家体制」となりました。
英語もそうですが、be動詞というのはその前後の単語が、イコールな関係ですよー、という印のような語(動詞)なんですね。
ここでも、estというラテン語版be動詞の三人称単数形が、Pafyumu=grexの、イコールの役目を持っています。
そこから推測して、このgrexはどういう意味か?歌手?アイドル?女の子たち?芸能人?いろいろ推測できますね。
では答えを調べましょう。
ぐーぐるほんやくー(大山のぶ代風)
前回同様、辞書を使ってももちろんいいのですが、今回は、ここでもネットの恩恵にあずかって、Google翻訳を利用してみましょう。
この時、英語にアレルギーがなければ、ラテン語→英語で翻訳するのがオススメです。
もちろん、ダイレクトに日本語に翻訳してもいいのですが、その場合、ラテン語→英語→日本語、って翻訳しているように思うので。
なるべく英語のニュアンスで解読する方がいいと思います。
私はGoogle翻訳のアプリをインストールしているのでアプリから。
herdと出てきました。これ、「(動物の)群れ」という意味ですね。
「Perfumeは群れ」、なんかイヤな訳です…
まあ、「グループ」という意味合いで使ってるんでしょうけど。grexという単語が適切かどうかはおいておいて、
意味としてはそんな感じです。
説明は後ろから
前回の前半の文、
…civitas sui iuris in Asia Orientali posita, …
civitas sui iurisの後ろのin Asia Orientaliとpositaという語がどういうcivitasかを説明している、と書きました。
ここでも、grexに続く語たちが、どういうgrex、グループなのかを説明しているのです。
後ろのIaponicarum, cantatricum,saltatricumという3語、見て気づくことがありますね。全部、語尾が-umというパターンで終わっています。
Iaponicarumは、日本Iaponiaをどうにかした形なわけですが、語尾パターンから格を突き止めたいと思います。
まず、Iaponiaをどのようにした形なのかを突き止めましょう。
私の持っている辞書には、そのままで載っていないので、今回も、Google翻訳の力を借りようと思います。
ラテン語→英語で、ラテン語のところにIaponicarumと入力しました。
何も変換されません。
語尾パターンは認識されていない可能性があるので末尾から1文字ずつ削っていきましょう。
すると、IaponicaのところでようやくJapaneseという翻訳が出てきました。
Iaponicaは「日本人の」という形容詞なんですね。正確に言うと、その女性形に当たります。
ここまでわかれば、今度は形容詞の語尾パターン一覧を見てみましょう。
語尾が-rumで終わっているのは、複数形、属格がクロスするところです。
はい。これで、IaponicarumはIaponicaの複数形属格ということが判明しました。
属格がどういう役目を持っているかは後でまとめることにしますね。
韻を踏んでいる?
語尾パターンが同じだと、他の語も同じ格の可能性があります。
前回の「日本」の後半の文、頭を見てみましょう。
…, insulasque permultas in mari Pacifico …
この最初の2語、-queという接語辞が付いていますが、insulasとpermultasで見ると、語尾が-asで同じ、格は女性形・複数・対格でした。
韻を踏んでいるような感覚ですかね。定かではありませんが。
さて、その韻を踏んでる説が正しければ、この後に続くcantatricumやsaltatricumも語尾が-umで終わっているので、同じく複数形・属格の可能性が高いです。
では実際に、cantatricumの語尾変化パターンを見てみましょう。
まずは原形を。今回は辞書を見てみます。
cantatricumは辞書にそのまま載っていないですが、近辺に、
cantatrix -icis, f (女性)歌手
という、Perfumeを説明するのにふさわしい単語がありました。この語がcantatricumの正体です。変化パターンは以下のとおりです。
予想通り、複数形・属格の形と一致しましたね。
saltatricumも同じです。辞書には、
saltatrix -icis, f (女性)踊り子
と載っていて、これまたPerfumeを説明するのにふさわしい単語です。
ちなみに真ん中にあるetは英語のandと同じ、「〜と」という語です。
結局、属格って?
最後のmusicae popularisも意味はWikiサーフィンで「ポップミュージック」とわかっていますが、形が違うので調べておきましょう。
Wikiの見出しではmusica popularisとなっています。musicaeはmusicaに語尾-eが付いた形ですね。
辞書を引いてみましょう。
musica -ae, f 音楽
となっています。見出しに-aeという語尾パターンも一緒に載っています。
ここで、辞書と仲良く編で放置していた伏線を1つ回収しましょう。
civitasを思い出してください。辞書にはこのように載っていました。
civitas -talis, f 国家
この、-talisは何かと。あの時は放置していたのですが、もう避けては通れません。
単語が名詞の時は通例、単数形の主格が見出しで続いて単数形の属格の語尾パターンが一緒に載っています(だいたいの場合)
つまりcivitasの場合だと、単数形・主格がcivitasで、単数形・属格がcivitalisということが辞書からわかるのです。
名詞の見出しがわかったとして、じゃあなぜ単数形の主格と属格だけが見出しに載っているのか、ですが、その理由はここではいったん放置しておきます(結局)
ということで辞書を見る限りでは、musicaeはmusicaの単数形・属格というのがわかります。
で、結局、属格って…?
grexの後に属格ばかり出てきていますが、結局のところ、属格って何?ということです。
これは、名称が異なっていますが、英語の所有格、「〜の」と同じ役割をもつ格です。何かに属していることを表す格、と理解するといいかもしれません。
日本人「の」
シンガー「の」
ダンサー「の」
ポップミュージック「の」
属格が持っている意味合いはこんな感じです。それが、grexという語に説明を付け加えているんですね。
でも、1つだけ仲間はずれがいますね。わかりますか?
Iaponicarumはもともと形容詞だったから別に属格にしなくても、「日本人の」という意味があるじゃないか、と。
はい。そうなんですが、ここでは属格にしないといけない理由があるのです。
ここでようやく文構造を見てみましょう。
Iaponicarum cantatricum et saltatricumまでが一まとまりで、前のgrexにかかって、「日本人の歌手であり踊り子のグループ」となります。
このcantatricumやsaltatricumがそれぞれ、「〜の」という意味を持つ属格になっているので、それと同じまとまりのIaponicarumも一緒に属格にしてあげないといけないのです。
そして後ろのmusicae popularisも属格ですが、これはその前の、「シンガーかつダンサー」という一まとまりにかかって、「ポップミュージックの」という意味になっています。
まとめ
まとめて訳すと、
「Perfumeは、ポップミュージックの、日本人女性シンガーでありダンサーのグループ」
という感じでしょうか。
ところで、musicae popularisは組み合わせで1つの語になっていますが、popularisも一応見ておきましょう。
popularis -is -e, adj 庶民の、一般に広まっている
このpopularisの格は何かわかりますか?
musicaeと一緒に前の語にかかっているので、これも属格です。
popularisは見出しである主格がそのままの形なので引っかかってしまいそうですが注意が必要です。
短い文なので1エントリーで終わるかと思いましたが、長くなってしまったので、後半は後編に回すことにします。